KTH(The Royal Institute of Technology in Stockholm)
王立ストックホルム工科大学マスタープログラム
大浦明子さんの留学レポート Ⅰ

こんにちは。私は今KTH(The Royal Institute of Technology in Stockholm) 王立ストックホルム工科大学で正規マスターとして2年間勉強しています。今ちょうど1年目が終了したところです。

こちらに来る前は、千葉大学 園芸学部 緑地・環境学科で勉強していました。

私のプログラムはUrban Planning and Designといってデザイン重視のランドスケープではなく、どちらかというと都市計画が中心に授業が構成されています。そのためにクラスメイトのバックグランドも様々で、ランドスケープ、建築、都市計画、社会経済学、アートなどなど。新しくデザインの技術を勉強するというよりは、今まで自分たちが勉強してきた知識を生かして、異なるバックグラウンドの友だちとグループになり、都市計画を考えるという感じだと思います。

こちらの実習はほとんどがグループワークです。またこのプログラムの授業は全て英語で行われているために国際色も豊かで、スウェーデンにいるにも関わらず25人ほどの生徒の中にスウェーデン人は2人。最も多いのは中国人、他にはエチオピア人、バングラディッシュ、オーストラリア、ヨーロッパ系は少数、そして日本人は私一人です。ちょっと不思議な環境ですが、国が違えば文化も違うために、とてもよい経験になっています。
clip_image002大学の中庭

留学に至るまで
私が留学に興味を持ち始めたのは学部4年生の時でした。
また北欧に興味があったので、留学するなら北欧に行ってみたいと思っていました。と言ってもやはり北欧の情報は少なかったために、情報収集にはかなり苦労しました。とりあえず、毎日インターネット検索をしていました。他には本屋や図書館に行ってひたすら「北欧」と書いてある本を読み、ささいな事でも何かの手がかりになるのではないかと思い、常にアンテナを張っていました。

4年の春にも一度、北欧の大学に応募はしたのですが、その時は受かりませんでした。そして、両親が認めてくれたこともあり、1年間の浪人生活を送ることにしました。英語を勉強しなおし、情報収集を続け、冬には見つけた大学の教授に連絡を取り一人で北欧の大学訪問もしました。

その時に私が訪問したのは、
保さんが参加していたUFUGの参加校
Copenhagen University(コペンハーゲン大学)、
The Swedish University of Agricultural Sciences(スウェーデン農業大学)、
Norway University of Life Science(ノルウェイ大学)、
Helsinki University of Technology(ヘルシンキ工科大学)
そして今通っている
KTH(王立ストックホルム工科大学)、
です。

どこの教授もとても親切で丁寧に大学を案内してくれました。他にもいくつか大学を見つけたのですが、ランドスケープの授業ではなかったり、私が入学できる条件ではなかったりで、最終的にこの5校に絞りました。まずは大学を見つけたらだめもとでいいので、連絡をとってみることが大切だと思います。
clip_image03Urban planningの学部棟
授業内容について
1年間でとったコースは
-Urbanism Worldwide
-Concepts and Tools in Urban Analysis
-Advanced Course in Urban Theory
-Public Places and Spaces
-Process in Urban Planning
-Compositions in Urban Design
-Structural Components in Urban Planning and Design

Urbanism worldwide
 世界中の都市計画を知るというのが目的で、グーグルアースを駆使しての授業でした。まず自分の出身の都市をプレゼンし、その後にグループワークで知らない都市を分析、ストックホルムとの比較、そして最後にプレゼンでした。また一番初めということもあり、授業の形式に慣れることも目的の一つだったと思います。

Concepts and Tools in Urban Analysis
 これはまず本を一冊読み(例えばケビンリンチの『都市のイメージ』)その中に書かれている方法を使ってストックホルムの都市を分析し、最終的に新しいデザインを考えるという内容でした。授業は主に理論中心で、最終プレゼンもデザインより、分析、問題提起の方に重点が置かれていたように思います。そのためにデザインの指導は少なかったです。


Advanced Course in Urban Theory
 完全に理論中心の授業です。都市計画自身よりも、それに伴う問題、郊外化、交通、インフラ、社会的問題、人種差別、経済などなど。毎週のようにセミナーがあり、ディスカッションがメインでした。最終的な課題は本を一冊読んでレポートを書くというもの。それも最後にプレゼンとディスカッションがありました。

Public Places and Spaces
 公共空間とは何か?というのが授業の課題でした。そのために前半は、公園等のオープンスペースからデパート、ショッピングセンター、パブリックアートといったヨーロッパの公共空間の概念について学びました。毎週、論文が渡されそれについて授業で話し合い、最終的にはサイトが渡され、“公共空間”をデザインしました。

Process in Urban Planning
 都市計画家の役割について、理論中心の授業でした。市民参加、様々な利害関係者の間に生じる摩擦をどう解決するか、行政との関係、都市計画家は常に中立の立場を保たなければならないと言うようなことです。最終課題として個人でケーススタディを見つけ、それについてレポートを書きました。

Compositions in Urban Design
 これはデザイン重視の授業でした。ストックホルム市内の開発が進められようとしている場所が対象地(地下鉄の駅二つ分程の範囲)で、工業用跡地をどうするかというのが課題。そのためにディテールデザインまでは求められず、広い視点で対象地を分析し、都市計画レベルでのデザインを求められました。

Structural Components in Urban Planning and Design
 前回の授業の対象地を含む、さらに広範囲が対象地。まず、不動産、交通、エコロジー、商業施設、コミュニティーという違った視点から、それだけに重点をおいてデザインを考えるという課題が一週間毎に渡されました。例えば、ある週は不動産価値を上げることだけを考えるといったような感じです。そしてそれらを全て考慮にいれ、“持続可能な都市”をデザインするというのが最終課題でした。

プログラムが始まる前に教授からのプレゼンがあり、このプログラムはアメリカや他のヨーロッパの都市計画系の大学を意識しているらしいです。

他の大学と比較してのメリットは理論と実践のバランスを重視していること。紹介した授業の内容からもわかるように、コースの半分は理論中心で、こちらに来てからたくさん論文や本を読みセミナーでのディスカッションも経験しました。また、実践的なデザインよりも理論を得意とする教授の方が多い気がします。

ランドスケープの設計をさらに勉強したい人には、このプログラムはちょっと違うかもしれませんが、私は逆に異なるバックグラウンドの学生とグループワークをすることで、新たな視点が生まれたり、刺激になったりとたくさんのことを学んだと感じています。

またスウェーデンのランドスケープは一年を通して素敵で、日々感動しています。今、ようやく半分が終わったところです。来年度には修士論文を書くことになっているし、残りの授業も大変ではあると思いますが、有意義な時間を過したいと思います。また、後日報告させていただきます。

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【参考リンク

KTHのホームページ 
 http://www.kth.se/?l=en_UK
KTHプログラムのホームページ
 http://www.infra.kth.se/sp/upd/index2.php
Copenhagen University(コペンハーゲン大学)
 http://www.life.ku.dk/English.aspx
The Swedish University of Agricultural Sciences(スウェーデン農業大学)
 http://www.slu.se/?id=580
Norway University of Life Science(ノルウェイ大学)
 http://www.umb.no/?avd=30
Helsinki University of Technology(ヘルシンキ工科大学)
 http://arkkitehtuuri.tkk.fi/engl/index.htm